千歳川流域では、平成21年9月7日の集中豪雨と、翌平成22年8月11日から12日にかけての前線と台風4号による大雨で、千歳川と支川の嶮淵川などの水位が上昇した。このため工事中の長沼町嶮淵右岸地区遊水地の掘削箇所に、洪水を緊急通水して貯め込んだ。試算では、平成21年9月洪水で約20ha、平成22年8月洪水で約48haの浸水被害を防いだ事になる。また今年平成23年9月の台風12号では、約115haの浸水被害を防いだ。
治水効果が検証された結果になったが、遊水地の魅力はそれだけにとどまらない。

 

平成21年9月降雨で工事中の長沼町の遊水地掘削箇所に洪水を緊急通水
*資料−札幌開発建設部の公式ホームページに公開された資料より

 

 
 
 
遊水地はその広さや自然環境を活かし、平常時は多目的に活用できるのが大きな特徴だ。
道内では周辺が公園で、水上スポーツエリア、水鳥の飛来地になっている砂川遊水地「砂川オアシスパーク」が有名だ。
道外ではまず、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県にまたがる渡良瀬遊水地が、自然にふれあう場として親しまれている。わが国最大規模のヨシ原が、絶滅危惧種を含むたくさんの生物を育んでいる事から、栃木県の「すぐれた自然」の一つにもなっている。
また河川で初のPFI手法を取り入れたのは、佐原広域交流拠点PFI事業「水の郷さわら」。スーパー堤防の上に、国と千葉県香取市が協働で水辺交流センターや道の駅、川の駅等の施設を整備し、維持管理や運営は民間事業者が行う。こうする事で民間の資金や経営手法等が活用でき、効率的かつ効果的な公共サービスが提供できる。
 
  レジャーやイベントにも活用される砂川遊水地
 
 
   
 

さらに、水辺空間を民間が利用できる法体制も整った。
国は管理する一部の河川で、民間事業者等の営業活動を社会実験として認めてきたが、河川空間のオープン化を都市及び地域の再生等に役立てるため、平成23年3月8日に河川敷地占用許可準則を一部改正した。
これで河川空間に売店やキャンプ場、夏の川床や係留された船上での飲食も可能になるなど、多彩な水辺のにぎわいが期待できる。

広島市の京橋川では、川沿いの飲食店が河川緑地を利用して一体的に営業する「地先利用型オープンカフェ」と、常設型店舗を展開する「独立店舗型オープンカフェ」が行われている。なお出店に際して、周辺の緑地化等を目的に事業協賛金の納入や清掃など、社会貢献を義務付けている。

また大阪市では、道頓堀川両岸の遊歩道整備に合わせ、オープンカフェやイベントが行われている(とんぼりリバーウォーク)。
遊水地のみならず、水辺を活かしたまちづくりとしても参考にすべき事例だ。

 
 


広島市京橋川のオープンカフェ(広島市提供
 
 

サケの遡上を見守る人々(千歳市を流れる千歳川。千歳川河川事務所蔵)

 

千歳川流域は江戸時代から人の往来が盛んで、現在も「千歳川かわ塾」という先駆的な体験学習が全国に発信されるなど、古くから川と人との関わりがとりわけ深い流域として知られる。

現在、各まちには遊水地利活用のための計画検討委員会が設置され、地域の声を聞きながらまとめられている。絶好のアクセスと自然を活かした、千歳川ならではの遊水地利活用を大いに期待するところだ。
 
 
 

千歳川流域の治水対策 
札幌開発建設部 http://www.sp.hkd.mlit.go.jp/kasen/09kawazukuri/01jigyo/01chitose_tisui/index.html

 
         
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